あらすじ

《ジャンニ・スキッキ》

 フィレンツェの由緒ある家の主、ブオーゾ・ドナーティが亡くなり、親戚一同が集まって泣いていた。ところが彼らの嘆きはどこか嘘っぽい……というのも誰しもがブオーゾの死を悼んで集まった振りをしつつ、遺産を狙っているのである。ところがここで、ブオーゾの「義兄」と名乗るベットがあらぬ噂を持ち込む。どうやらブオーゾは遺言状を残しているらしく、そこには「遺産は全て修道院に寄付する」と書いてあると……

 

ブオーゾの従兄で一番の長老シモーネの提案で、一同はまず遺言状を探し回る。遺言状を一番に見つけたのはブオーゾの従妹ツィータの甥にあたる、リヌッチョという青年であった。リヌッチョはラウレッタという恋人がいるにもかかわらずツィータ達からは結婚を反対されており、手に入った遺産で何とか願いを叶えられないかと考えているのだ。だがそんな願いも、また親戚達の欲望も虚しく、遺言状には「遺産は全て修道院へ」と書いてあった……憤りと嘆きを露わにする親戚一同をよそに、リヌッチョは既に次の手を打つ。ラウレッタの父親で頭の切れる新興市民、ジャンニ・スキッキによい打開策を出してもらおうというのだ。「こんな由緒ある家が新興市民の助けを借りるなんて!」とプライドをむき出しに反対する親戚達に、リヌッチョが新しい仲間を受け入れるよう説得している間に、ジャンニ・スキッキとラウレッタが現れる。

 

登場したジャンニは当初、態度の悪い親戚一同と攻撃的なツィータに不機嫌となるが、結婚のためにリヌッチョを助けてほしいと願う娘ラウレッタを前に、ついにブオーゾの遺産について策をめぐらすことを承諾する。まだブオーゾが死んだばかりで、彼の死が親戚以外には知らされていないことを知ったジャンニは、一計を思いつくが、そこであろうことかブオーゾの侍医スピネロッチオ先生が来てしまう。それも首尾よく追い払ったジャンニは、ついに計画を明らかにする。何と瀕死のブオーゾになりすまして公証人を呼び、遺言状を作り直してしまおうというのだ。

 

親戚一同はジャンニの計画に狂喜し、リヌッチョはさっそく公証人を呼びにいくが、次に問題となるのは遺産の分け前だった。ツィータとシモーネは各地にある別荘を欲しがり、ベットは牧草地を欲しがり、ブオーゾの甥/姪にあたるゲラルド/ネッラ夫婦とマルコ/チェスカ夫婦は土地を欲しがり…まではよかったものの、ラバ・ブオーゾの家・粉ひき小屋についてはついぞ決着がつかなかった。結局一同は「ここはジャンニ・スキッキの裁量に任せよう」という結論を下す、ジャンニの心にはまだ明かしていないもう1つの策があることも気が付かずに……。こうして親戚一同はジャンニをブオーゾに変装させ、ジャンニは親戚達に「違法なことをしているということを忘れずに…事が発覚したら罪人として手を切られ、フィレンツェを追放される」と固く口留めし、公証人を迎え入れる。

 

ブオーゾになりすましたジャンニは、さすがの腕前で嘘の遺言を告げ始めた。修道院への寄付は僅かな額、別荘や牧草地や土地は親戚達の希望通りの分け前となり、ついに残るは先ほど決着のつかなかったラバと家と粉ひき小屋だけになった……ところがここで親戚達の誰しもが予想もつかない結論が下される……「それらは………私の唯一無二の親友、ジャンニ・スキッキに与える」と!!一同は騙されたと悔しがるものの、遺言を偽造していることがバレてしまうので何も出来ず、リヌッチョだけは自分とラウレッタに遺産が入ることを悟って大喜びするのだった。

 

公証人が帰った後、親戚達は「盗人!!」と喚きたてるが、無事に遺言状を偽造し終えたジャンニ・スキッキは「ここは私の家だ、出て行け!」と、反対に親戚達を追い返す。親戚達は家から持ち出せる限りのものを漁って怒り狂いながら出てゆき、ジャンニは幸せに溢れるリヌッチョとラウレッタを見届け、舞台の幕を下ろすのだった。

 

《ラ・ボエーム》

 【第一景】

クリスマス・イヴで賑わうパリの街の一部屋では、ボヘミアンと呼ばれる男達ーー芸術家を目指す詩人ロドルフォ、画家マルチェッロ、哲学者コッリーネが、その夜の暖をとる薪すら無く、寒さに震えていた。彼らの仲間で音楽家のショナールが、僅かな稼ぎで薪やワイン等を持ち込み、ようやく一同は活気づく。家賃を請求しに来た家主ベノアも弱みを掴んで撃退し、パリの街へと出かける準備をするのだった。ところが詩人ロドルフォだけは「原稿の仕上げをしたい」と言い始め、独りアパートに残るのだった。
そこへ、同じアパートの下の階に住むお針子のミミが、蝋燭の火をもらいにやって来る。彼女はどうやら病気を持っているらしかったが、ロドルフォは彼女に惚れ込み、わざと自分の蝋燭の火を消してミミの手を取る。月明かりの下で2人は惹かれ合い、一緒にパリの街に出て行くのであった。

【第二景】
パリの街は行き交う人々とそれを引き止める売り子達、そしてカフェ・モミュスの店員やお客で賑わっていた。ショナール、コッリーネはそこで思い思いの品を買い、傷心中のマルチェッロは相手してくれる女子を探し、カフェ・モミュスで合流する。そこにロドルフォ加わったロドルフォはミミを紹介し、彼女はロドルフォに買ってもらった薔薇色のボンネットを大切そうに見せる。
ところが、いよいよ5人が食事を前に乾杯しようというその時、先日マルチェッロと別れたばかりのムゼッタが、お金持ちのアルチンドロを連れて、豪華な身なりでやって来る。今はアルチンドロのおかげで不自由なく暮らすものの、やっぱりマルチェッロのことが忘れられない彼女は、露骨にマルチェッロの気を引く行動に出て、人々の注目を浴びる。そんな彼女に共感するミミと、喜劇だと笑い飛ばすボヘミアン達、苦しむマルチェッロ。ついにムゼッタはアルチンドロを追い払い、マルチェッロと抱き合うが、話はめでたしで終わらない。カフェの勘定が来るが、その額は第一幕でショナールが稼いできたお金ではとても足りなかった、、。その時ちょうど軍楽隊のパレードが始まり、人々はそれを見に群がってくる。ムゼッタは機転を利かせ、カフェの勘定を戻って来るであろうアルチンドロに押し付け、一同を連れてパレードを見る人々に紛れる。軍楽隊への歓声とムゼッタを讃えるボヘミアン達の声で、パリの街は一段と盛り上がるのだった。

【第三景】
そんな夢のような日々もつかの間だった。第一幕であれほど惹かれ合ったロドルフォとミミだったが、ロドルフォは事あるごとに嫉妬しミミに辛く当たり、ミミはマルチェッロに助けを求める。とは言えマルチェッロも、ようやく酒場でムゼッタとともに、看板絵描きの役目と歌を教える仕事を得たところで、決して楽ではないのだが、、。
マルチェッロは自分の働く酒場に転がり込んできたロドルフォを問い詰め、ロドルフォはようやく本心を露わにする。ミミの病気は不治のもので、自分の愛では彼女の命をもたせることは出来ない、と。ところが一連の会話をミミは聴いてしまっていた。彼女はロドルフォに別れを告げ、2人は花咲く春に別れることにする。一方のマルチェッロとムゼッタも、ムゼッタの客にマルチェッロが嫉妬したことが原因で喧嘩となり、また離れ離れとなってしまうのだった。

【第四景】
互いにふりだしに戻ったマルチェッロとロドルフォは、どうも描画に/詩作に身が入らず、それぞれの恋人を思い出している。そこへ食べ物を手に入れたコッリーネとショナールが入ってくる。ボヘミアン達の生活はますます苦しくなっており、今日の食事はパンとニシンだけだが、四人は馬鹿騒ぎで飢えを凌ぐのだった。
ボヘミアン達が踊り騒ぐところに、ムゼッタが飛び込んでくる。いよいよ虫の息の耳が、最後はロドルフォのもとで死にたいと言って来ているのだ、と。一同がミミを迎え入れると、彼女は笑顔で応えて手を差し伸べ、ムゼッタとマルチェッロは和解する。ムゼッタはミミが冷え切った手で欲しがるマフを探しに行き、マルチェッロはムゼッタのイヤリングを手に医者と薬を調達しに行く。コッリーネは大切にしてきたコートを売り、ショナールはロドルフォとミミを2人きりにするため、去って行く。そしてロドルフォとミミは、2幕で買ったボンネットを手に、出会った思い出を語りながら2人の時間を過ごす。
だが、ミミの死の時は刻一刻と迫っていた。一同の願いも虚しく、ミミはムゼッタが「ロドルフォが用意してくれたの」と言って差し出したマフを手に、息を引き取る。ロドルフォはミミの亡骸に泣き伏し、マルチェッロ、コッリーネ、ショナール、ムゼッタは、ミミの死を各々の胸に受け止めるのだった。