ガラコンサート内容紹介

♪《愛の妙薬 L'elisir d'amore》より〈愛しい妙薬よ…ラララ〉

 ネモリーノ:大塚康祐/アディーナ:打越梨紗

 

ドニゼッティのオペラ作曲家としての職人芸を一躍知らしめた作品(1832年)で、日本でも世界でも最もポピュラーな喜劇オペラの1つです。

貧乏青年のネモリーノは村一番の別嬪でお金持ちな娘アディーナに恋していますが、彼女には「私はそよ風のように移り気なの!1人を愛し続けるなんて狂気の沙汰!」とはねつけられてしまいます。とそこへ現れるのがインチキ薬屋のドゥルカマーラ。彼は「たった一日で効き目が出る愛の妙薬」と称して一本のワインをネモリーノに渡しますが、純情なネモリーノは大喜び。現れたアディーナにも「明日には僕に惚れるんだから!」と強気でつれない態度をするものですから、アディーナも不機嫌を露わにします。

今回上演する楽曲はそんな「喧嘩」のシーンですが、それまでネモリーノを鼻で笑っていたアディーナが、いざ彼が冷たくなると怒り出すのが面白いところ。相手の言動が気になって仕方ないこの2人、最終的にはハッピーに結ばれます。

 

 

♪《ランメルモールのルチア Lucia di Lammermoor》より〈ルチア、近くに…もしお前が裏切るなら〉

 ルチア:四津谷泰子/エンリーコ:木村雄太

 

 ドニゼッティの悲劇オペラの中でも最も有名な作品の1つ(1835年作曲)で、スコットランドの貴族に起こった実話とそれに基づいた小説『ラマムアの花嫁』をオペラ化したものです。

 アシュトン家を守らなければならないという使命を背負ったエンリーコは、妹ルチアが政敵エドガルドと密かに恋に落ちていたことを暴き、彼女を良家のアルトゥーロと結婚させようと画策します。そしてエドガルドの不実を示唆する偽の手紙でルチアを絶望させ、彼女に「お前が私を裏切ると、私の首は刎ねられ亡霊となってお前のところに現れるのだ」と脅すのでした。1曲の二重唱でありながら「エンリーコがルチアの『ふさわしくない』愛に言及する」→「エンリーコからの縁談をルチアが拒む」→「エンリーコ、ルチアに偽の手紙を読ませ、ルチアは絶望する」→「アルトゥーロが到着し、いよいよエンリーコは野心を燃やす」→「嫌がるルチアを突き放し、エンリーコは脅しの言葉を浴びせる」と曲中の話の展開が早く、その度に音楽の表情も次々と変わってゆきます。

 この二重唱の後、哀しみのうちに結婚誓約書にサインしたルチアは、宴の場に乱入してきたエドガルドに罵られ、ついに花婿アルトゥーロを刺して狂気に陥ります。エンリーコはエドガルドに決闘を申し込みますが、ルチアが狂乱の果てに命尽きたことを知ったエドガルドは、決闘を待たずして自ら命を絶つのでした。

 

 

♪《アンナ・ボレーナ Anna Bolena》より〈泣いているの?…私が生まれたあのお城へ〉

 アンナ:打越梨紗

 

 英国女王エリザベスⅠ世の母アン・ブーリンの非業の死は、ご存知の方も多いかと思います。このオペラはまさにアン・ブーリンをヒロインとした悲劇オペラ。ドニゼッティの悲劇オペラは、政争の激しかった16世紀のイギリス/スコットランドの歴史と縁が深く、アン・ブーリン以外にも、先述のエリザベスⅠ世、スコットランド女王メアリー・スチュアート、エリザベスⅠ世の寵臣ロベルト・ダドリーなどが主人公となっています。

 ドニゼッティの比較的早い時期の悲劇オペラ(1830年)ですが、この作品は先ほど採り上げた《ランメルモールのルチア》に先立って、いわゆる「狂乱の場(ヒロインが哀しみから狂気に陥り歌い続ける場面であり、歌手の技巧の見せ場でもあるところ)」を設けています。いよいよ王の寵愛を失い死の危機に瀕したアンナが、意識を錯乱させた中で婚礼の時を回想し、やがてかつての恋人ペルシーとの思い出を幻想的に歌い上げます。

 

 

♪《ドン・パスクアーレ Don Pasquale》より〈準備は出来ているわ…さあ急いで〉

ノリーナ:四津谷泰子/マラテスタ:木村雄太

 

 晩年期に差し掛かったドニゼッティの喜劇オペラ(1842年作曲)で、今回上演する《リータ》と比較的近い時期に作られています。類型化された登場人物像や「変装」場面のコミカルさなど、喜劇オペラならでの味わいがある一方で、「結婚」や「財産」をめぐる駆け引きは《愛の妙薬》よりもややブラックなテーマを感じさせます。

 タイトルのドン・パスクワーレは老齢の頑固な資産家ですが、若い女性と結婚することで言うことを聞かない甥エルネストを追い出そうとしています。そこで一計を案じるのが今回登場する2人、エルネストの恋人ノリーナとエルネストの友人マラテスタです。マラテスタはなんと、修道院にいる自分の妹をノリーナに演じさせ、彼女をドン・パスクワーレの花嫁候補として薦めようというのです。そしてドン・パスクワーレの「花嫁」として近づいたノリーナが、彼を懲らしめようというのです。

 今回の二重唱には、ノリーナが「修道院から出てきたばかりのおぼこ娘」を演じるべく、マラテスタと練習する場面が入っています。彼女が演技を始めた時やマラテスタがそれを褒めた時の音楽の変化なども楽しんでいただければ幸いです。